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第2章 昆虫博士の悲しい恋
化学教師の高柴は仁科不由美の突然の死に嘆いた。高柴は密かに不由美を愛していた。
ゲージのナカで蠢くサソリを見つめていた。この学校に20年もいる長老だ。
腹にクシでつけたみたいな傷があるが、この幅が大きいのがオスだ。このサソリ、ケンジは幅が狭い…………つまりメスなのだ。メスの方が体型がガッシリしている。オスのサソリを入れると求愛のダンスを踊る。互いにハサミを合わせている。
ダイオウサソリを高柴は探していた。
不知火学園のなかにいるって噂だ。アフリカ大陸に分布するサソリだが、学園に棲む魔術師によって召喚された。サイズは30センチだ。ドデカイハサミで獲物を叩き潰す動画を見たことがある。
不由美が言っていたな?
英国情報部を築いたナントカって男はゲイで、男も愛せるスパイを好んでスカウトしたらしい。
そーいや中尾孝太郎って臨時教師が最近、姿を消したがスパイだったのかな?
中尾は何度も高柴をデートに誘ってきた。
もちろん、断ったが?
翌朝、中尾の黒焦げ死体が不知火公園近くにある雑居ビルで見つかった。
「火災現場からは加速剤が抽出されたそうよ?」
職員室で牙城綾香が言った。
「ガソリンが使われたってことだな?」
「さすが毒柴先生ですね?」
「そのアダ名はやめてくれ」
足音が聞こえてきた。スロウチハットをかぶった青年が立っていた。
「君、校舎内では帽子を脱ぎなさい」
加齢臭のする尾藤教頭に青年が叱られる。
青年は臆することなくライフル銃を教頭に突きつけた。尾藤教頭は両手を挙げた。
「こっ、殺さないでくれ!」
「ミニエー銃」
綾香は少しではあるが銃の知識があった。
アメリカは東北諸藩にも銃を売っていた。
大河ドラマ『八重の桜』で綾瀬はるかが果敢に戦うシーンが記憶に蘇る。
青年は素足だった。間違いなくCSAの兵士だ。
CSAは1861年2月に独立宣言をした南部連合を母体にした部隊だ。
イーオンをやっておいてよかった。
「あなた、タイムスリップでもしてきたの?」
そーいえば聞いたことがある。かつてアメリカでタイムマシンが開発されたことに。
「牙城先生、英語話せるの?」
高柴が目を丸くする。
裸足の青年が高柴をギロリとにらみつけた。
「この裏切者」
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