死の胎動は木霊する

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 その日の夜、最初に「死ぬ」と言い渡された少女・あゆみのツイッターのDM欄に通知がひとつ合った。くだんbotからだった。一文目には「助かる方法があります」と書かれていた。もちろん、こんな仕様があるのは知らない。初めてのことである。  恐る恐るあゆみがDMの内容を開いてみると、最初の「助かる方法があります」の一文のあとに、「明日、担任の先生を殴りなさい」とだけ書かれていた。意味がわからなかった。先生が全員を殺すとでもいうのだろうか。まったく理解ができない。  担任の木吉正孝教諭は、子供たちに比較的ではあるが好意的な印象を持たれる人物。数学という難しい分野でありながら、わかりやすく楽しい授業をしてくれる先生である。しかし、あの先生を殴らなければ自分は死んでしまうのだろうか。  ピコンとラインが鳴った。同級生の紗希からだった。LINEにはツイッターのスクリーンショットが送られていた。よく見ると、くだんbotからのDMである。自分に送られてきた内容と同じものがそこにあった。 「もしかして、みんな同じ内容のDMが送られてきてるのかな」  あゆみはクラスのグループLINEチャットに「くだんbotからDM来た子いる?」と送ってみた。すると、チャット欄はくだんbotのスクリーンショットで埋まっていった。全員に送られていたのだ。  誰かがLINEチャットで「やるしかないよね」と発言した。みんな、「OK」「やったね」と同意のスタンプ爆撃。 「殴らなきゃ死んじゃうんだもん。しかたない、しかたないよ」 あゆみは自分に言い聞かせるようにグループLINEにチャットした。また、みんなから同意のスタンプが爆撃のように流れてきた。心は決まる。
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