死の胎動は木霊する

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 修学旅行当日、木吉教諭は教え子たちからリンチされた。突然の暴動に為す術もなく、目の下の骨を砕き、内臓を痛めつけられ、病院送り。命には別状はなかったが、何が起きたのかわからないパニックによって精神にも傷を負う。  残された子供たちは、素直に警察に逮捕された。誰もが「やらなきゃ殺られてた」と呟き続けている。異様な光景に警察官たちも首を傾げるしかなかった。  警察署に連れて行かれる時、一人の少年・隆が大声を上げた。握りしめられたスマホには緊急速報ニュースの画面が映し出されていた。それは飛行機事故のニュース。本来は、このクラスが修学旅行に行くために利用する為の航空便だった。 「このことだったんだ」 「助かったんだ」 「やったよ」 「やったやった」  子供たちは頭の中のなにかが切れたように大喜びして思い思いの言葉を叫んだ。死の不安からは解き放たれた。その喜びが場を支配している。警察官たちには何が起きたのかさっぱりわからなかった。
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