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「まいごの、まいごの、こねこたんー♪ あなたのおうちは、どこですかー♪」
歩きながら、心優ちゃんは機嫌良さそうに歌を歌う。
両親がゾンビになってしまったと言うのに、こんなに平然としていられるものなんだろうか?
それとも、人って言うのはどうしようもない悲しみに出会うとリミッターみたいなものがかかってしまうのだろうか?
「おうちーをきいても、たまらない。なまえーをきいても、たまらないー♪」
少ししんみりしながら心優ちゃんの歌を聞いていた僕は、不意を突かれて思わず噴き出した。
「にゃんにゃんにゃにゃーん♪ にゃんにゃんにゃにゃーん♪ なーいてばかいりるーこねこたんー♪」
そんな僕を気にした素振りも無く、心優ちゃんの歌は絶好調だ。
サビの部分に入り、僕とつないだ手はぶんぶんと大きく振り回される。
「いっぬっのー、おさわりマン♪ こまってしまってわんわんわわーん♪ わんわんわわーん♪」
ついに、僕の腹筋は崩壊した。
ずるい、おさわりマンはずるすぎる。
犬よりも僕の方が困ってしまう。
「ヴぁははヴぉふぁ」
のどの調子が悪くてうまく笑えてないけど、僕は呼吸困難になるほど爆笑する。
急にお腹を抱えてしゃがみ込んだ僕を心配して、心優ちゃんは顔を覗き込んだ。
ほんと可愛い。なんだこの可愛らしい生き物は。
「おにいちゃん、ぽんぽんいたい?」
「ヴぁ……ヴぁいジょうヴ」(だ……大丈夫)
呼吸を整えて、緩みまくる頬を引き締め、僕らは歩く。
住宅街に近い、昔からある喫茶店が開いているようだったので、とりあえず僕らは「カランカラン」とドアベルを鳴らして店に入った。
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