甘尾 小丸(あまお こまる)の場合

7/13
前へ
/13ページ
次へ
 近所の家から調達した乗用車の運転席には、先ほどの老人が座っていた。  リアシートを見ると、小丸と友里、そして柴犬がバスタオルと毛布にくるまって座っている。  左足に怪我をしていても、右足と両手が動けば車は運転できると言う事で、彼らは無人の家から乗用車を拝借し、小丸の父が居るであろう消防署へと向かっていた。  お礼を言われ、暖かい車の中でバスタオルと毛布に包まれた小丸は、友里と柴犬に挟まれて、ポカポカした気持ちになりながらすぐに眠りに落ちる。  もう免許を返納してから10年以上も経つ老人の、ゾンビの少ない場所を選びながらのゆっくりとした運転ではあったが、わずか2~3キロほどしか離れていない消防署への車での移動は、数分ほどの旅のはずだった。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加