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目が覚めた時、そこは真っ白な空間だった。
「……よう、起きたか寝坊助」
「せんぱい……」
僕は先輩に抱えられていた。
ドクンドクン、と彼の身体からは規則的な心音が聴こえていた。
生きている――
僕も、先輩も。
生きて、ちゃんと触れ合えている。
伸ばした手は彼に届いたのだ。僕は彼の隣にいる。
その事実が嬉しくて、嬉しくて。
「お前は本当に泣き虫だな」
「ごめんなさい……」
「別にいいよ。どんだけ泣いたって」
「せんぱい、ありがとうございます……」
彼の言葉に甘えて、僕は少しだけ泣いた。
嗚咽を漏らす僕の背中を、彼の優しい手はたどたどしい手つきで撫でてくれた。
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