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あ、この人とは気が合わないだろうな。
出会った瞬間、バディを組んだその時、僕は彼に対して直感的にそう感じていた。
燃えるような赤い髪、黒のスーツに真紅のシャツ、左右の耳には趣味の悪いシルバーのピアスが幾つも輝き、その全てが会社の規則に反していた。
協調性がなく傲慢で、他部署の人間と問題を起こすのは日常茶飯事。
女癖も悪く、警察のご厄介になった事も数知れず。
彼にまつわる悪い噂は絶えず、社内で揉め事が起これば大抵、台風の目はその人だった。
しかし、それを咎める者はいない。
直属の上司だけでなく、部長クラスや役員までもが彼の素行を黙認している。
どれだけ悪さをしようと会社の空気を乱そうと、それなりの処罰は与えても解雇はしない。
それだけで十分だった。
例えどんなに悪名高く、人でなしのクズで最低な男だったとしても、どんなに気が合わなくても構わない。
仕事ができるなら……最高の金づるになってくれるなら、僕はどんな仕打ちでも受け入れてみせる。
僕はそう決意を胸に、死神になった。
「いいぜ、俺がお前の借金返済の協力をしてやるよ。
会社ノルマの倍をこなして、給料も通常の倍を約束してやろう。まぁ、俺にとっちゃ簡単な話だ。
仕事は全部俺がしてやる。殺しも計画も、指示も全部だ。お前は何もしなくていい。
お前の仕事は、効率よく仕事を回して、俺の機嫌を損ねない事。俺のやること為すことに文句を付けない事。
その代わり、借金が全て返済し終わった暁には……
そうだな、お前の処女でも貰おうか。
だってさ……普通の男にとってそれ以上の屈辱はないもんなぁ……?」
そう言って笑うあの人は、噂通りのクソ野郎だった。
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