930人が本棚に入れています
本棚に追加
「……そうしないと君が今、暴走して彼を突き放しているように、彼もまた暴走して君を守ろうとする。そうなっちゃうと取り返しのつかない事になっちゃうよ?」
温かい手を掴んだまま僕は少しだけ泣いた。
「雫さん……ありがとうございました」
「お、泣き虫もそろそろ卒業かな。じゃぁ君はこれから、どうするつもり?」
「やっぱり……向き合う所から始めようと思います。先輩に謝って、ちゃんと……僕の気持ちを伝えようと思います」
「そうだね。それで、彼の気持ちも聞いてあげなさい」
頷くと、雫さんの手は僕の手からすり抜け、また優しく頭を撫でた。
優しい手つきが心地良い。
人に触れ合えるのは、どれだけ幸せなんだろう。
「さてさて、お兄ちゃんがちょっぴり成長したところで、このお兄ちゃん会議はお開きにしようか!」
「いてっ!!」
頭を撫でていた手が最後にぺちっとまた額にデコピンをかまして離れていく。
悪戯っぽい笑みを浮かべた雫さんに釣られ僕も笑みを零し、隣に座る小春に目を向ける。
彼女にも感謝の気持ちを伝えようと俯いた顔を覗き込めば、その顔は真っ青だった。
「……小春!?」
「なんで……今月はまだのはずじゃ……」
「小春、大丈夫!?しっかりして!!」
小刻みに震える身体を叩き顔を真正面から見ると、その瞳は虚空を見つめたまま反応すらしない。
紫色になった唇は浅い呼吸を繰り返す度、どんどんと色を失くしていく。
最初のコメントを投稿しよう!