3話 中編

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「満くん、小春をここへ!……満くん!!」 名前を呼ばれても、足が地面に張り付いたように動かない。 壁一面に沿って積まれたその小さな箱は、僕の妹だった。 いや、違う。 僕の妹と同じ、ただ命を紡ぎ続けるだけの箱。 「何で……」 「はやく連れてきて!!小春を……妹を殺したいの!?」 その言葉にはッとして、重たい脚を引きずりながら、彼女が待つ寝台の上へと小春を運んだ。 青白くなった肌は生気を感じさせず、身体全体が仄かに発光して見えた。 雫さんはその胸元に小さな箱を一つ置き、その上に何か文字を書き込む。 そうすると、箱は淡く光を放った。 僕は咄嗟に死神の能力を使い、その箱を見る。 八重樫亮、年齢十九、死亡年月日は今日。 その小さな箱は確かに、会社から言われていた目標の一人だ。 ゆらゆらとゆれる炎が徐々に弱まって消えていく。 ものの数分で、彼の命の炎は消え、その小さな箱の下に眠る少女の身体は色を取り戻し始めていた。 僕はそのまま、壁に積まれた箱の山を見上げた。 どれもただの箱だ。命を灯す灯は見えない。 けれど、床に散らばった幾つかの箱には今の彼と同様に、目標である人間の名前が浮かび上がっていた。 探していた人々の魂が今、全てここにある。 目標の名前が書かれた箱を雫さんが拾い上げ、また同じように彼女の胸元に置く。 そうするとまた、命の炎が消えて、小春の血色がよくなる。
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