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「いやぁああああああっ!!!」
悲鳴が聴こえる。
ぞわりと肌が粟立った。
嫌な予感に後ろを振り返ると、生温かな赤色の液体が僕の頬を濡らす。
人間の腕が、宙を舞う。
その白く美しい指にはペンが握られていた。
「ぁああああああああっ……!!うで、腕がァッ……!!」
雫さんが膝から崩れ落ちる。
肘から先が無くなった腕を掴みながら、喉から人間の物とは思えない呻き声を上げている。
その首に、ぴたりと美しい刃が当てられた。
「なぁ、窪塚」
冷めた声が僕を呼ぶ。
「……俺さ、考えたんだよ」
酷く淡々とした声だ。
「お前を幸せにする方法。障害が全部なくなればいいんだろ」
能面のような顔が僕を見つめていた。
「こいつ殺して、そこのも殺して。そしたらさ、もうお前が我慢する必要ないだろ?」
その瞳には光がない。
彼は僕なんて見ていない
「お前は頑張ったよ。もう十分すぎるくらいだろ?なぁ、もう楽になろうぜ」
……違う、僕しか見えてないんだ。
「一緒に幸せになろう、窪塚」
安城先輩はそうやって笑うと、刀を振り上げた。
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