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気を取り直してもう一度端末を覗くと、目標の座標を示す赤い光が先ほどより僅かに移動していた。
青い光は一直線にこちらに向かっているが到着にはまだ少し、時間がかかりそうだ。
ここで逃がして無駄に時間を食うのも今後の仕事に支障が出る。
それなら先に目標の位置だけ確認しておこう。
端末を鞄に仕舞い、身を隠していた建物から一歩外へ出ると、辺りは騒然としていた。
変わった風貌の人々や鋼の翼を持つ大きな鳥の群れ、見たことのないような作物が立ち並ぶこの一帯は、この世界で言う所の繁華街だろうか。
朝市の時間ならば尚更、人通りも多かったのだろう溢れる人の波は商店を壊し、互いを押し倒しながら突然の襲撃に怯えて、街の出入り口へと向かっている。
こんな状態では目標を見つけようにも難しい。
端末で確認したところでマップは詳しい場所を教えてくれるわけではない。
「仕方ないなぁ……」
この後も何件か仕事をこなしたいので、出来れば温存しておきたかったけれどそうも言っていられない状況。
僕は深呼吸を一つして瞼を閉じると、意識を目のあたりに集中させた。
全身を巡る血が滞るような気怠さと、鈍い痛みを伴う熱が身体を覆っていく。
脳から視神経を伝い、逆流するように網膜に力を送り込む。
涙を流す前のように目頭が熱くなる感覚に、全神経を集中させる。
そろそろ良いだろうか。
そっと開いた瞳の先の視界は歪み、目の前にある自分の手さえ酷く霞んで見えた。
灰色の風景、停止した時間に取り残され視力は限りなく低下、その代償に僕たちは命の期限を知ることが出来る。
それが僕たち死神の、命を見る能力だ。
魂が途絶える時を色で、或いは数値で認識する。
魂の見え方は千差万別、人によっては違うけれど終わりを告げる瞬間に変わりはない。
世界から色が抜け落ちたような景色の中で、少し先に七つの淡い光が浮かんでいる。
消える前の蝋燭の火がゆらゆらと揺れているような光景。
僕だけが見える、もうすぐ消える魂の形である。
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