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「お前そーゆーのさぁ、やめとけよ」
「……アンタの後始末しただけだろ。無駄な仕事増やさないでくださいよ」
近くの壁に寄り掛かっている男を睨み付けながら立ち上がると、グラリと立ち眩みがした。
未だ落ち着かない視界は、目の前にいる男の必要ない情報までを克明に僕へと伝えてくる。
安城夏樹、年齢二十三、死亡年月日不明。
僕の仕事でのバディであり、同じ課の先輩でもある。
死神……というよりは人殺しが彼にとっての天職なのか、会社では一番の実力者でS級の仕事も難なくこなし、只の一度の失敗すらなく、ついた通り名が鬼神。自他ともに認める天才である。
その才能もさることながら、容姿も抜群に優れており、人目を引くような美しさとその才覚はどこの部署からも引く手数多である。
但し、口が悪い。そして性格も悪い。
傲慢で協調性もなく、ゴーイングマイウェイ。そして刹那主義者。
今が良ければソレで良しとするその生き方は、安寧に堅実に生きていきたい僕とは正反対で、意見が食い違うのは日常茶飯事。
誰が何といおうと構わん、俺は俺の道を行くぜ!的なノリを素でやってのけるこの男は、当然の如く敵も多くて、それに関しては相棒として僕も相当参っている所だ。
今だって僕の文句に悪びれもせず、こちらを非難するような大きなため息をこれ見よがしに吐いている。
「そっちじゃなくてお祈りの方だよ。そんな見ず知らずの人間の死を憐れんでどうするんだって話」
「……別にいいじゃないですか。先輩にはっ……んぅ!!」
関係ないでしょ。
そう出かけた言葉が喉の奥に飲み込まれていく。
いつの間にそんな傍に居たのか、先輩は僕を壁に押し付けると無理矢理、唇を重ねてきた。
突然の事に何の対応も出来ないでいると、太腿の間に先輩の足が差し込まれ、ぐっとナニか硬いものが押し当てられる感覚を感じた。
ちゅっと啄む様なキスが何度か続き、混乱する頭が何とか状況を理解し始めると同時にカーッと顔に熱が集まっていく。
そうだ、忘れていた……
そう言えばこの人、戦闘終わりでめっちゃくちゃ興奮してるんだった――!!
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