西瓜の赤い色は…

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 アレは…あのスイカはいったいなんなんだ?  この店から売られて行った先でいったい何をしているというんだ?  それまでのそこはかとない不安から、言いしれぬ恐怖に変わった感情を抱きながら僕は棚の隅に潜むアイツを睨みつける。  だが、その疑問の答えに繋がるヒントは、他ならぬそのスイカ自身が教えてくれた。 「――またか…………あれ?」  いつもの如く…いや、慣れというのは恐ろしいもので、またも店頭に戻っているスイカに〝いつも〟などとそれが日常のように感じ始めていたある日、よく見るとそれにはこれまでと違って、一つ、いつにない変化が起こっていた。  スイカの蔓が、伸びていたのだ。  そう。あのスイカの天辺にあるヘタから、にょろっと蔓が伸びていたのである。  長さは30センチくらいだろうか? しかも、その蔓からは新しい鮮やかな緑色の葉っぱまで生えている。  仮にこれが昨日売ったスイカではなく、まったく別の新たに仕入れたスイカなのだとしたって、これはおかしい。こんな状態では出荷されてこないはずである。  それとも何か? 出荷後に成長し、ここまで蔓が延びたとでも言うのだろうか?  いずれにしろ、これでは商品として棚に陳列することはできない。  こんなもの置いといたら、あの店長代理に何を言われるかわかったもんじゃない。  そこで仕方なく、いつも野菜の整形に使っている菜切り包丁を取り出してきて、その蔓をヘタの付根から切ろうとしたのだったが……。 「…つっ!」  僕の指先に、何かチクリと針で刺されたような痛みが走ったのである。  見ると、蔓を?んでいた左手の人差指の先から、みるみる赤い血が滲み出てきている……。  どうやら蔓で指を切ったらしい。  そういえば、蔓の先端もなぜか棘のように鋭く尖っているが、スイカの蔓って、そんな鋭い棘があったりしただろうか?  そんなことを考えている間にも、指先にできた小さなドーム状の血液は鋭敏な痛みとともにどんどんと大きくなってゆく。  僕は慌てて指を口に含み、傷を舐めようとした……ところが。  僕が指を舐めるよりも一瞬早く、スイカの蔓が傷口に吸い付いたのである。  蔓が、自分から動いた……ように僕には見えた。  そして、傷口にまとわり付いた蔓は、傷口から流れ出た僕の血をきれいに吸い取ったのだ。
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