西瓜の赤い色は…

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 しかし、こうして茹だるような暑さの中、あの夏の日と同じ蝉の鳴き声を耳にする時には、不意にあの頃のことを思い出す……。  今日もそんなことを思いつつ、陽炎の立つアスファルトの道を汗だくで歩いていると、ふと、町角にひっそりと佇む、涼しげな影を作る青果店が目に留まった。  僕は照りつける太陽から逃れるようにして、その店の影の中へと滑り込む。  すると、その店の軒先には――あの夏の日と変わらずに、大きなスイカの玉がいくつも並んでいたた……。                                                                                         (西瓜の赤い色は 了)
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