西瓜の赤い色は…

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「あのう……ここにある大きなスイカは今朝仕入れたんですか?」  僕は店の奥の間を覗き込み、おそるおそる店長代理の男に尋ねた。 「んん? ……ああ、そいつか……そうだが、それが何かしたか?」  その背中の曲がった怪しげな男は、畳の上にランニングシャツ姿で寝転んで、気だるそうに扇風機の風に当たりながら無愛想に答える。 「あ、いえ、別に何も……」  さすがに「昨日売ったスイカに見える」などと言うわけにもいかず、僕はそう返すと苦笑いを浮かべて誤魔化した。  ともかくも、仕入れた本人が言うのだから間違いはない。やはりこのスイカは昨日あったものとは似て非なるものなのだろう。  売ったはずのスイカが店に戻ってるなんて、この暑さにやられたのか、僕の頭もどうかしているな……。  と、その時はそれで納得したのであるが。  それから数日後、再びあのスイカは好評の内に売れ、そして、その翌日、またしても店の棚に戻っていたのだった。 「………………」  僕は、スイカの丸い巨体を前にして唖然とした。  しかし、前回のこともあるので、また同じようなスイカが仕入れられたのだろうとすぐに思い直し、その日は忙しく仕事をする内にそんなことも忘れてしまった。  スイカは個々で大きさや形、黒筋のパターンが微妙に違うとはいえ、所詮は皆、同じ球体なのだ。  似ているものがあったとしてもおかしいことはない……というか、それが当然だろう。  そう。そんなことがあった二回目くらいまでは、僕もそう考えて納得していたのだ。  ……だが、そうした既視感(デジャヴュ)は、その後も時を置かずして幾度となく続いたのである。  僕は、さすがにこれはおかしいのではないか? と思い始めた。  そこで、何度目かの既視感を覚えたその日、僕はじっくりとその巨大スイカを観察し、さらにはケイタイのカメラで(その当時はまだガラケーの荒い画像だったが…)で、表面に浮き出た黒い縞模様のパターンを撮っておいた。  それまではそんな丹念に眺めたことがなかったので、この時点ではっきりと断言することはできなかったものの、やはりどこか見覚えのあるような〝顔〟をしている。
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