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買って来たスイカが消える?
……それって、もしかして……あの、スイカなんじゃ……。
「吸血鬼にスイカ泥棒に、最近ここらも物騒になったものよ。じゃ、あんたも独り暮らしなんだから気をつけなさいよ?」
特になんの根拠もなかったが、その事件とあのスイカのことを自然と結びつけ、今日も棚の隅の影に潜むそれへ僕が目を向けていると、おばさんはいかにも井戸端会議的な台詞を残して立ち去ってゆく。
……いや、まさかな。これはきっと、ただの偶然の一致だ……それは考え過ぎってもんだろ?
その時は、そんな奇妙な符号にも自分の思い過ごしと受け流していたのであるが、その後、店に集まってくるお客さん達の話から、さらなる驚くべき事実が明らかとなった。
なんと、盗まれたスイカは全部、どうやらこの店で買われたものらしいのだ。
いや、それだけでそれがあのスイカだとは断言できない……断言はできないが、当の盗まれた被害者であるお客さんの顔を見てみると、ぼんやりとではあるがアレを売ったような記憶があるし、それとなく話を訊いてみたところ、やはり盗まれたのは店で一番大きなスイカを買って行った時だと言っていた。
こんな偶然ってあるのだろうか?
……もし、盗まれたスイカが全部アレなのだとしたら、それは盗まれたんじゃなく、アイツが自分でひとりでに……。
だが、そうしてますますアレへの疑惑を深めてゆく僕を他所に、話はそれだけに終わらなかった。
もう一つの奇妙な事件、「体から血がなくなる」奇病についての情報も、お客さんと話をする内にだんだんと集まって来たのであるが……驚くべきことにもその奇病の発症者は全員、スイカ泥棒に遭った被害者、あるいはその家族と合致するのである!
全員…といっても、実際に奇病にかかったすべての人に当たったわけではないし、店で聞くお客さんの話だけが唯一の情報源なのであるが、そのジグソーパズルのピースのような話を繋ぎ合わせてゆくと、どうにもそういうことらしいのである。
いったい、これはどういうことなのだ? あのスイカはひとりでに帰って来るだけじゃなく、この吸血事件にも何か関わっているということなのだろうか?
最早、偶然の一致とはいえないその新事実に、僕は驚き、そして混乱した。
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