0人が本棚に入れています
本棚に追加
始めて来た店にもかかわらず、僕の足取りは早かった。
ついた場所には他の花とは何処か違う、心惹かれるホウセンカが飾ってあった。
値段が書かれていないためおそらく売り物ではない。
だが、この花を見てようやくわかった。先程の声はこれだ。
「君は」
何を言おうとしたのだろう。勝手に動く口、その花へと伸びる手。
「その花に触れてはいけない!」
「え?」
僕の手が花に触れたと同時にそんな声が聞こえた。
振り返るとそこには、髪の長い綺麗な女性がいたのだ。かなり焦っておりこちらに向かってくる。
「その花をはやくはなすんだ、少年。もう繰り返してはならないあんな悲劇を」
「悲劇? どういうことですか」
訳が分からずその女性に聞き返す。彼女が口を開けたと同時に急な目眩に襲われ僕は意識を失った。
「君は選ばれたんだね……。それならば仕方ない。彼女をどうか」
最後に聞こえたのは悲しそうな声だった。
最初のコメントを投稿しよう!