第1章

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始めて来た店にもかかわらず、僕の足取りは早かった。 ついた場所には他の花とは何処か違う、心惹かれるホウセンカが飾ってあった。 値段が書かれていないためおそらく売り物ではない。 だが、この花を見てようやくわかった。先程の声はこれだ。 「君は」 何を言おうとしたのだろう。勝手に動く口、その花へと伸びる手。 「その花に触れてはいけない!」 「え?」 僕の手が花に触れたと同時にそんな声が聞こえた。 振り返るとそこには、髪の長い綺麗な女性がいたのだ。かなり焦っておりこちらに向かってくる。 「その花をはやくはなすんだ、少年。もう繰り返してはならないあんな悲劇を」 「悲劇? どういうことですか」 訳が分からずその女性に聞き返す。彼女が口を開けたと同時に急な目眩に襲われ僕は意識を失った。 「君は選ばれたんだね……。それならば仕方ない。彼女をどうか」 最後に聞こえたのは悲しそうな声だった。
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