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「父上はそう長くはないだろう」
執務室に呼ばれ、また何かお小言かとのんびり考えていたら、話題は思いの外重いものだった。
「まぁ、もうお年だから。患ってもいたし」
「…そうだな」
父が重篤な状態だと聞いても、俺の心は何ら動くことはない。俺たちの父…この腐った王国の国王陛下は、俺たちが幼い頃から、息子たちに干渉することはなかった。良くいえば放任、でも実のところ無関心に等しい。
元々父は賢さが欠落してる人だった。政治に関する嗅覚も無いに等しい。だから俺たちの母が政治に口を出し、何とか保つことができていたらしい。母が亡くなったあとも、その一族の親類縁者がしゃしゃり出てきて、甘い汁をすすっている。
「即位の準備を進める」
「いいんじゃないですかね」
にっこりと微笑むと、兄さんは眉間の皺を深くした。あれ? お望みの答えと違ったかな。
「俺が即位したら、お前はまた様々な輩から讒言(ざんげん)を吹き込まれると思うが」
「今さら。大体、そいつらにしてみると、俺は政治から離れてるどーしようもない王子って印象でしょ?」
「それでも利用価値は見いだすさ」
「ま、上手くやるから」
なるほど、兄さんは兄さんなりに俺の心配をしてくれてるわけだ。
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