第6章 貴族の世界

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「…」 どれくらい時間が経ったのか分からない。 口の中は鉄の味がする。身体中痛いし、得体の知れない液体でどろどろだし、全体的に感覚がマヒしてる。無理に体を折り曲げられたせいかも。視界も霞んでるなぁ。いつの間にか足の戒めは取られているけど、ところどころ衣服は破かれていて見るも無惨な感じだろう。 「おい、反応しなくなったぞ」 「いいんじゃね、大人しくてさ…」 「言うこと聞く気になったのかもな」 ばーか、体力尽きなきゃ暴れてるっての。 「あんたらが…」 「ん?何だ、王子様喋れるんじゃん」 「あんまりにもへったくそだから気が抜けてさぁ」 「減らず口きくじゃねーか…お前この状況分かってんのか?」 ぐ、と首筋に両手が当てられ、力を込められる。 「言うこときかねーから、こうやって苦しい思いするってのに」 「…っ、んぐ…」 「ほら、命乞いしてみろよ」 「げほっ、ごほっ」 手が離され、咳き込む。 「……、あんたらの情けないもんじゃ、勃つもんも勃たねーよ」 「てめぇ…!」 また一発殴られる。あーあ、男前が台無しじゃん。どうしてくれる。 「ふぅ…ロディーノ殿下…」 アヴェルス卿が落胆した様子で俺の顎をすくう。 「…触んなよ、変態」 「その仮面のような笑みを崩して差し上げたかったのですが」 「残念だったな、お望みの結果にならなくて」 「全くですよ…せっかく、」 アヴェルス卿がさらに言葉を続けようとすると、扉が開いて従者が何やら告げた。すると、アヴェルス卿は手を離し、おもむろに立ち上がった。 「残念ですが私は一旦席を外させてもらいましょう…」 そう言い残し、去っていった。 足音が遠ざかっていく。 もう戻ってくんな。 「じゃあ俺たちは続けようぜ」 「…」 早く終わんねーかな。 痛みを感じながら、息を吸い込み、吐き出す。 男の一人が俺に馬乗りになった。 目を閉じ、殺されんのだけは勘弁、と思った時。突然扉が開いた。 一瞬、その場が静まり返る。 「……、っ、貴様ら!今すぐそこから退け!」 目を開ける。 よく見えない。 でも、わかる。 「怒るの、珍しーな…ジェラ…」 そこで意識が途切れた。
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