第6章 貴族の世界

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(レミジオ視点) この腐敗した政治を一掃できるなら、どんなことだって出来る。事実、この手は様々な謀略と思惑で血塗られている。 「…」 長く、閑散とした廊下に夕日が差し込む。 奥から歩いてきた人物は、俺を見ると一瞬表情を歪ませたが、すぐに取り繕い、媚びるような笑みを向けてきた。 「レミジオ殿下…これはこれは、ご機嫌麗しゅう。珍しいですな、このような離れにいらっしゃるとは」 「…」 目の前の男…アヴェルス卿は深々と礼をした。 目の前に立ち、顔を上げるように告げる。 「どうやら貴殿は、尻尾切りが上手いようだな」 「何のことでしょうか…?」 アヴェルス卿が不敵に微笑む。 …。 俺は「家族」を大切にしたいと思っている。それは俺たちを道具扱いしていた母や、見向きもしない父ではなく…いつもそばにいた、ロディーノやヴェルネル、カティアの息子だというもう一人の弟アイリール…その3人さえ無事なら、俺はそれでいい。 例え、兄弟たちに一線を引かれていたとしても。 「ロディーノが傷を負った」 「そのようですな。ご容態は?」 「無事だ。しばらく安静にさせる」 「そうですか…」 「ロディーノに手を出した輩は早急に『処理』しようと思っていたんだが、すでに終わっていた」 「何やら外からの刺客だそうで…物騒ですなぁ」 「そうだな。俺の即位を阻止しようと、周りの者を襲う不届きものもいるらしい」 「ほう…」 得た情報を総括すると…どうやら、俺のせいで襲われたという面が強い。これだと、またロディーノは俺から離れていってしまうかもしれない。少し寂しいが…その方がロディーノのためになるだろう。 「以前からロディーノを付け狙っていた者もいたようだ」 「王族であるというだけで、不幸な目にあわれるとは、難儀ですな…」 本当ならば、この道化師を葬りさることが必要なんだろう。だが、まだ俺にはその力がない。捕らえるのは簡単だ。ただ、この男がロディーノを襲わせたという確たる証拠がないまま事を荒立てても、付け入る隙を与えるだけ。 「今度俺の弟が理不尽に『不幸な目 』に遭ったら、その首謀者は二度と日の目を見られないようになるだろうな」 「……心得ておきましょう。その時は微力ながらお手伝い致します」 これ以上俺の「家族」に手出しはさせない。 そのための力が、欲しい。
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