第6章 貴族の世界

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「…本当にもう大丈夫なのか?」 「平気。ジェラは心配性だよなぁ」 にこりと微笑んでやると、ジェラは困ったように眉根を下げた。参ったな、安心させたかったんだけど。 「ま、あの狸親父は俺に顔をばっちり見られてるから、またすぐに妙なことをしようなんて思わないだろ」 「そうだといいんだけどな…」 「それに、これからはジェラがそばにいてくれるんだし」 「ああ…そうだな。俺が守るよ」 わしゃわしゃと頭を撫でられる。 ー…拉致されてから数日経った。 俺はジェラの家で療養させてもらっていた。城は危険すぎるから、ジェラの家にお邪魔することになったんだけど、そこでとんでもないことを告げられた。 『騎士になる?!ジェラが?!』 『ああ』 『でも今期の試験終わってるよな?いくら緩い国政っていってもさすがに試験受けないとなれないんじゃないか』 『そうだな。だが、父親の口利きで潜り込めた。しばらくは父親のお抱えの騎士として仕事をして、ゆくゆくはロディ専属に…』 『父親って誰?』 『…それは…』 「俺って、ジェラのこと何にも知らなかったんだな」 「黙っていてすまなかった」 「いいって。何か複雑っぽいし」 ジェラの父親が貴族だってこと。 ジェラの母親が一人でジェラを育てたこと。 ジェラの父親には貴族の妻がいること。 ジェラには母親の違う妹がいること。 今回俺が新たに知った事実だ。 ジェラの母親は優しそうで穏やかな人、だったと思う。俺が初めてジェラに会ったとき、すでに病床についていて…5年前に、亡くなった。 「騎士になろうと思ったのって…俺のため?はは、なんて、自意識過剰かなー」 「ロディのため、というより自分のため、だな」 「自分?」 「ああ。ロディのそばにいたい」 にこ、と微笑みかけられ、不覚にも胸が高鳴った。こんなこと言われたら、大抵の子はイチコロだろう。罪な奴め。 「ジェラ…その、ありがとな」 なぜかは知らないが、ジェラは俺が酷い目にあったことをとても後悔している。親友だから?でもそんな風に思われる価値、俺にあるのかな。
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