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(ジェラルド視点)
「新しく配属されたジェラルドだ。指導よろしく頼む」
「…どーも」
じと、とした目線で見つめられ苦笑してしまう。目の前にいる彼は、ロディを助け出す際に手助けをしてくれた人物だ。
アヴェルス卿は用意周到な男で、警備も分厚かったということだが、目の前の彼が「掃除」しておいてくれたらしい。
「あの時はありがとう。おかげで取り戻せた」
「別に。俺はあいつが嫌いだからな。正直ざまぁみろって感じだ」
「…はは」
彼の名前は、ルーシェス・ユール。
何の因果か、ロディの恋敵と同僚になってしまったというわけだ。話を聞く限り、お互い反目しあっているらしい。
「でも手助けしてくれた」
「上司の命令だ。守る奴の名前は聞いてなかった。あいつの護衛だなんて聞かされてたらやってなかったっての。それを知っててあのクソジジィは知らせなかったんだ。くそ」
「君のおかげで助かったのは事実だ。ありがとう」
「…ふん」
そして、なんとルーシェスは俺の教育係に任命されたという。バージェ卿は何を考えているんだろうか。わざわざ火種になりそうなことをして、もしも俺とロディが仲違いしたらどうするつもりなのか。
ぐるぐるとした思考に陥っていると、「おい、行くぞ」と声をかけられた。慌ててあとを付いていく。
「間取り図は頭に完璧に入れろ。賊が侵入しやすい経路もな。つーか、うちは結構ザル警備だから、刺客と相対した時の対応を学んだ方がいいかもな」
「そうか…奥の殿にも賊が入ったと噂で聞いた」
「そう。普通あそこまで入り込まれるわけがないんだが、あの時は騎士に裏切り者が紛れてたからな」
ぴたりと歩を止め、ルーシェスが俺に目線を送る。
「新人は目をつけられやすい。あんたはどんなツテで、何を目的に入ってきたのかは知らないが、自分の身の安全は確保しておくんだな」
「ありがとう。気を付ける」
「…」
「…?」
眉間に皺を寄せ、妙なものを見るような目で見られる。何かおかしなことを言っただろうか。首を傾げると、ルーシェスはそのまま足早に歩き始めた。
「……猫かぶってんのか、ただの無垢な馬鹿か…」
「え?何か言ったか?」
「……いや?精々貴族どもに食い殺されないように気を付けるんだな」
そう言ってルーシェスは意地悪そうに微笑んだ。
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