第6章 貴族の世界

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(シェス視点) 「そもそも、あいつにはねじ曲がった恋慕を向ける相手がいるだろ」 「知ってる。ロディの話は8割方その人についてだから」 「…かっさらえば」 「考えたことはあるけど…無理に事を進めてもロディが振り向かないことくらい分かってるから」 「へぇ、『親友』のままでいいって?」 「少なくとも特別には思われてるし」 こいつも大概拗らせているようだ。 俺だったら、アイルに好きな奴が出来たら閉じ込めてしまうだろうなと思う。まぁ、ないけど。アイルは俺のことがものすごく好きだし。ただ、もしもそんなことになったら絶対に人目の触れないところに置く。他の奴がアイルの心を占めるなんて許さない。 「悠長に構えていたら、どこぞかの馬の骨に持っていかれる気がするけどな」 「そうだな…でも、傷つけたくないんだ」 「は…、まぁ、別にあいつとどうなろうとどうでもいいけどな」 げんなりしながら肩を竦める。 ただ、何となくこいつの「いい子」っぷりにイライラしたのは事実だ。だからつい、意地悪なことを考えてしまう。 「あいつも一応王子だから、縁談がひっきりなしに来てるらしいな。うちの上司も娘を嫁がせようか、なんて言ってたぞ」 「……え」 「ま、早いところ手に入れておかないと一介の騎士ごときじゃ手の届かない場所に行くかもな」 少しだけ困らせてやろう、くらいの気持ちだった。実際上司…バージェ卿だって冗談で言っていたはずだ。自分の愛娘をあんな王子に嫁がせることのリスクを考えると、現実味はない。 だけど、俺のこの一言がきっかけで、ジェラルドに妙に固い決断をさせてしまったことに対しては、一応罪悪感があるんだぞ?
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