第6章 貴族の世界

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「…」 「どうしてそんなに不機嫌なんだ?」 ジェラが困ったように俺の顔を覗きこむ。俺のために騎士になってくれた優しい親友。 それはありがたい。とてもありがたい。 そばに心許せる友がいてくれるのがこんなに嬉しいことなんだって、実感させてくれてる。 でも、 「いつもルーシェスと一緒にいる」 「いつもというわけじゃ…」 「いつもだ! 俺が見ると、いっつも一緒にいる!」 「まぁ、教育係だし…」 「それも腹立つ!」 ぐ、と拳を握りながら険しい顔でジェラを見る。 すると、何とも言えない微妙な顔で苦笑された。 「ジェラは俺の親友なのに」 「しばらくは覚えないといけないことが多いし、ルーシェスは先輩に当たるから。ロディ専属になるのはまだ色々と段階があるんだ」 宥めるように撫でられるけど、心のもやもやは晴れない。ルーシェスの奴、わざとやってるんじゃないかってくらいジェラと一緒にいて、俺がその場面に出くわすと、嫌そうな顔をしたあとに鼻で笑うんだ。ムカつく。何だかジェラを盗られた気分だ。 「ルーシェスに嫌なことされてないか?」 「いや…特には。放任的な部分はあるけど、聞いたことには丁寧に答えてくれるよ。意外と面倒見がいいみたいで、周りの評価も悪くない」 「………へー…」 いつも通りの穏やかで優しい声に、何故だか今日はイライラが募った。それに、ルーシェスのことを擁護するような言葉が嫌だった。 「…俺、あいつ嫌い」 「ん、ああ…そうだよな。ごめん、この話はやめにしようか」 兄さんがルーシェスと話してる時とはまた違う、妙な苛立ちが燻る。胸の辺りがもやもやして、胃が気持ち悪い。今までジェラが他の人と話してても、こんな気持ちになることはなかったのに、変だ。 「ロディ?」 「…何でもない」 ムスッとしたままジェラから目線を外す。 嫌だな。せっかく近くに来てくれたのに。こんな風に振る舞われていたら、近くにいる分、ジェラは俺のこと面倒になるかもしれない… でも、この苛立ちは消せない。どうしたらいいんだろう。
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