第6章 貴族の世界

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「あなたが訪ねてこられるとは珍しいですな、ロディーノ殿下」 「特定の貴族と親しかったら色々と面倒ですからね」 「そうでしょうね。でも訪ねて来られた…その理由にとても興味がありますなぁ」 相対した貴族…バージェ卿は面白いものを見るような表情で着席を促した。 この人もアヴェルス卿に負けず劣らずの腹が読めない男だ。出来れば近づきたくなかった。ルーシェスの上司だし。 「ジェラの父親だって聞いたから、直接話してみたかったんですよ」 「なるほど」 バージェ卿は、容貌も性格もジェラルドと血が繋がってるとは到底思えない。まぁ、強いて言うなら、目元が少しだけ似てるかもしれない。 「しかし私はジェラルドとは一緒に暮らしたことがありませんからなぁ…何をお聞きになりたいのですか?」 「…血が繋がってるのは本当なんですね」 「ええ、まぁ。昔色々と遊んでたツケですかね。今になって現れるとは思いませんでしたよ」 「…」 「はは、そう怖い顔をしないでいただきたい。この国ではよくあることではありませんか」 よくあってたまるか、と思いつつも、父親やその親類縁者や貴族連中のことを考えると、あながち間違いとは言えなかった。 「何で俺を助けるようなことをしたんですか? あなたは王子に擦り寄るような人じゃないでしょう?」 「ええ、その通り。あまり近づきすぎても宮中の魔物共に標的にされますからな。ただ、我が息子殿が力を貸してほしいと土下座までするから可笑しくて…つい手を貸してしまいましたよ」 「どげ…、ジェラがそんなことを」 「おや、知りませんでしたか。そこに這いつくばって助力を乞うてきましたよ」 バージェ卿が指差しながら、くつくつと笑う。その笑みに不快になりながらも、ぐっと堪えて拳を握る。ジェラルドの立場を守るためには、俺はこいつを確固たる地位に収めるべきだ。 今日はその下調べ。人柄と、能力と、思考、敵対関係の者、野心…総合的に判断して、守ってやらないといけない。例え胸くそ悪い輩であろうと、ジェラのためなら我慢する。 そうすれば、ジェラは俺のそばにずっと居てくれるかもしれないから。
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