第7章 それぞれの想い

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「ジェラと外に出るの久しぶりだよな」 「そうだな。最近何かと忙しかったから」 アヴェルス卿の一件があってから、もう1ヶ月ほど経っている。その間、アヴェルス卿の動きは特に何もなくて、視界にすら入ってこない。少し不気味だ。 「で、買いたいものって?」 「ああ…まぁ、日用品だな。でも、その前に色々店を見て回らないか?ロディも久しぶりの外出だろうし」 わしゃわしゃと頭を撫でられ、久しぶりのその感触に嬉しくなった。騎士になってからのジェラは、何となく俺の知らない人、みたいな空気を出すこともあって寂しかったからかもしれない。照れくさくてジェラには言えないけど。 「…」 「ロディ?」 「あ、ごめん。何か久しぶりだなーと思ってさ。そんなことより、ほら、あそこの店に入ってみよう!」 くすぐったいような、妙な感覚を振り払おうと、ジェラを引っ張って店に入った。 ** 「やっぱりジェラと一緒にいるのが1番楽だなー」 「そうか?それならよかった」 気兼ねしなくていいし、ジェラは俺のことを理解してくれてるし、居心地がいい。俺にとってジェラはかけがえのない親友だよなぁ、としみじみ思う。 「ずっと一緒に居られたらいいのにな」 「…っ」 はた、とジェラが足を止める。 不思議に思って俺も立ち止まって振り向くと、ジェラは珍しく困ったような顔をしていた。 「ずっと?」 「ん?あー…まぁでも、ずっとは無理か」 「…どうしてそう思うんだ?」 「どうしてって…だって、ジェラもいつか結婚するだろ?俺とこんな風に遊び歩くのは無理になるって」 「…結婚」 「きっとジェラはあったかい家庭作るよな」 いい夫、いい父になるだろうな、と思う。 ジェラと結婚する人はきっと、幸せになる。 …そんな想像をして、なぜか胸が苦しくなるのは何故だろう。親友だってことは、この先も変わらないはずなのに。 「……ロディは」 「俺?んー、どうだろうな。結婚する気はないけど、縁談が色々来ててさ、面倒。ただ、貴族と繋がりもつのは何かと有利だし、結婚するのもいいかもな」 「…」 「ジェラ?」 冗談めかして告げると、ジェラは黙ってしまった。表情は読み取れない。 「…帰ろうか」 「へ?ああ、まぁもう遅いもんな」 その帰り道、会話はなかった。
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