157人が本棚に入れています
本棚に追加
その日は、確かよく晴れた日だったと思う。
少し肌寒くて…外に出たとき、体が震えたのを覚えてる。
早朝に「渡したいものがある」なんて書かれた、ジェラからの手紙がドアの下から差し込まれていて、不思議に思いながら出掛けたんだ。
「ジェラ?こんな早くにどうしたんだ?」
「ロディ」
町の裏通り。人がいないような裏道。そんな寂れた指定の場所に行くと、いつになく真剣な面持ちのジェラがいた。
「これを受け取ってほしいんだ」
「…?」
ジェラが何かを差し出す。手元を見ると、小さな箱が見えた。不思議そうに見ていると、ぱかり、と開けてくれた。
「ん…?何、これ」
「指輪だ」
「…そりゃ見れば分かるけど」
「受け取ってほしい」
「…、…、…んん?」
指輪を俺に?
…。
……?
指輪を贈るって、どういう意味だっけ?
「俺と家族になってほしい」
「…家族?」
家族。
誰と、誰が、家族?
考えても考えても、頭の中が整理できない。
もしかしてからかわれているんだろうか。
「め…、珍しいな!ジェラも冗談、」
「本気だ」
ぐ、と力強く見つめられる。
おかしい。ジェラがそんなこと言うわけないのに。
「俺は、ずっとロディのことが」
「や、やめろよ」
「昔から、」
咄嗟に、ジェラの口を塞ぐ。
ダメだよ、ジェラ。
その先の言葉は、ダメだ。
「それ以上、言わないで…ほしい」
「…」
優しく、ジェラの口を覆う手が剥がされる。
ジェラの手は、酷く熱く感じた。
「お前のことが好きだ、ロディ」
「…っ」
「愛してるんだ」
息が詰まる。上手く呼吸ができない。
真っ直ぐ見つめるジェラの瞳が怖くて、反らしてしまった。
「…何で、そんなこと急に言うんだよ…」
「お前を誰にも渡したくないんだ」
「やめろよ…そんなこと、言うな」
「『親友』のままでいいと思ってた。でも、やっぱり嫌だ。ロディに同じ目線で、同じ方向を向いてほしいんだ」
「…っ、今までの関係だって良かっただろ?!」
声を荒げ、ジェラの手を振り払う。
だって、おかしい。ジェラが、おかしいこと、言うから。
「俺はもう、気持ちを押さえられない」
「やめろっ!聞きたくない!」
耳を塞いでも言葉が消えない。
消えてくれない。この関係を壊したくないのに。どうして急に。
「…っ!」
俺は自然と逃げ出してしまっていた。
最初のコメントを投稿しよう!