第7章 それぞれの想い

3/15
前へ
/69ページ
次へ
その日は、確かよく晴れた日だったと思う。 少し肌寒くて…外に出たとき、体が震えたのを覚えてる。 早朝に「渡したいものがある」なんて書かれた、ジェラからの手紙がドアの下から差し込まれていて、不思議に思いながら出掛けたんだ。 「ジェラ?こんな早くにどうしたんだ?」 「ロディ」 町の裏通り。人がいないような裏道。そんな寂れた指定の場所に行くと、いつになく真剣な面持ちのジェラがいた。 「これを受け取ってほしいんだ」 「…?」 ジェラが何かを差し出す。手元を見ると、小さな箱が見えた。不思議そうに見ていると、ぱかり、と開けてくれた。 「ん…?何、これ」 「指輪だ」 「…そりゃ見れば分かるけど」 「受け取ってほしい」 「…、…、…んん?」 指輪を俺に? …。 ……? 指輪を贈るって、どういう意味だっけ? 「俺と家族になってほしい」 「…家族?」 家族。 誰と、誰が、家族? 考えても考えても、頭の中が整理できない。 もしかしてからかわれているんだろうか。 「め…、珍しいな!ジェラも冗談、」 「本気だ」 ぐ、と力強く見つめられる。 おかしい。ジェラがそんなこと言うわけないのに。 「俺は、ずっとロディのことが」 「や、やめろよ」 「昔から、」 咄嗟に、ジェラの口を塞ぐ。 ダメだよ、ジェラ。 その先の言葉は、ダメだ。 「それ以上、言わないで…ほしい」 「…」 優しく、ジェラの口を覆う手が剥がされる。 ジェラの手は、酷く熱く感じた。 「お前のことが好きだ、ロディ」 「…っ」 「愛してるんだ」 息が詰まる。上手く呼吸ができない。 真っ直ぐ見つめるジェラの瞳が怖くて、反らしてしまった。 「…何で、そんなこと急に言うんだよ…」 「お前を誰にも渡したくないんだ」 「やめろよ…そんなこと、言うな」 「『親友』のままでいいと思ってた。でも、やっぱり嫌だ。ロディに同じ目線で、同じ方向を向いてほしいんだ」 「…っ、今までの関係だって良かっただろ?!」 声を荒げ、ジェラの手を振り払う。 だって、おかしい。ジェラが、おかしいこと、言うから。 「俺はもう、気持ちを押さえられない」 「やめろっ!聞きたくない!」 耳を塞いでも言葉が消えない。 消えてくれない。この関係を壊したくないのに。どうして急に。 「…っ!」 俺は自然と逃げ出してしまっていた。
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

157人が本棚に入れています
本棚に追加