第7章 それぞれの想い

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(ジェラルド視点) 「今までの関係でも良かっただろ?!」 そうだな。その通りだ。 「やめろ!聞きたくない!」 困らせてごめんな、ロディ。 でもこの気持ちを押さえることなんて、もうできなかったんだ。 ** ロディと会ったのは8年前。 あいつは、当時親からの風当たりが強かったり、周りの親類縁者や貴族から媚びたような扱いを受けたり、逆に嫌悪感を向けられたりと、まぁ王族にはありがちな後継者争いに巻き込まれていた。それだけでなく、兄への気持ちを自覚し始め、さらにどうしたらいいか分からなかったらしい。 初めて会ったとき、「…居場所がないんだ」とぽそりと呟き、寂しそうな顔をしていたのを覚えている。 ロディの楽しそうに笑う顔が好きだ。 キラキラと輝く笑顔が愛しい。 俺のことを信頼して、甘えてくれるのが嬉しい。 泣いていたら抱きしめたくなる。 俺がそばにいるよと、安心させてやりたい。 こちらを振り向いてくれなくても、「親友」という立場は死守してやると心に決めていた。 『縁談の話が出てるらしい』 『結婚してもいいかもな』 でも、シェスとロディからそれぞれそんなことを聞いて、急に恐ろしくなった。 いつも俺がそばにいたのに。ロディの隣は、俺の特等席だと思っていたのに。 でも違うよな。 いつかロディは結婚して、家庭をもって、子どもが生まれて…俺は、そばにいられなくなる。今までのように接してくれなくなる。 分かっていたのに。 そんなこと、分かっていたのに… 「俺と家族になってほしい」 ああ、そうだ。これが本心だ。今まで隠していただけだ。本心を殺そうとしていただけなんだ。 …。 ロディ、お前のことが世界で一番愛しい。 欲望に際限なんてないから、きっと、これ以上そばにいたら…もっと欲しいと願ってしまう。 だからロディ、俺のこと、嫌いになって。 こんな傲慢で我が儘な奴からは、逃げて。 それで俺の心を、殺してほしい。
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