第7章 それぞれの想い

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それから数日。 相変わらずジェラとは話せなくて、胸だか腹だか分からない部分がもやもやしたまま、ただ時だけが過ぎていった。 そして、悪い予感がひとつ、的中した。 「…、ルーシェスを捕まえた?」 「そのようです。現在牢につながれています」 兵士からそんなことを聞いて、「やっぱり」という気持ちと、「何で今さら」という気持ちが混ざりあう。 ルーシェスを捕まえたのは兄さんだ。巫女の宮殿から城に来たときに、部下を使って昏倒させたらしい。手段を選ばない兄さんらしいけど、どうして今さらそんなことをしたんだろう。数日前の口論が原因だろうか? 「…」 俺の足は自然と牢に向かっていた。 ** 地下の牢の、奥深く。 他の囚人たちから隔絶されたその牢に、ルーシェスはいた。右手が吊るされ、後ろの壁にもたれかかるように座っている。どうやら意識はないようだ。 「……ロディーノ?」 「!」 じっと見つめていると、後ろから声をかけられた。ゆっくりと振り返ると、そこには暗い目をした兄さんが立っていた。 「なぜここにいる」 「…あー、うん、兄さんがルーシェスのこと捕まえたって聞いて、ちょっとした興味本意で」 にこ、と邪気のない笑みを向けると、兄さんは感情のこもっていない声で「そうか」とだけ呟いた。 「ルーシェスさ、何かしたの?」 「いや…ただ、」 「ただ?」 兄さんは一瞬躊躇うように目線を落とし、ゆっくりと俺の後ろ…ルーシェスに目を向けた。まるで俺の存在なんか、見えてみたいだ。 「ルーシェスをここから離れさせないために、…ルーシェスの1番大切なものを手に入れるために、捕らえた」 「1番大切なもの?」 「そうすれば、ルーシェスはここから離れない。もう二度と、…俺のそばから離さない」 「…っ」 刺すような暗い炎が燃える瞳をルーシェスに向ける兄さんは、怖いけど綺麗で…とても胸が、苦しくなった。 決して俺に向けられることのない激情。 欲しい。 兄さんの深くてドロドロした熱を、俺に向けてほしい。他の誰かではなく、俺に。 「…。ねぇ、兄さん」 「何だ」 「じゃあさ、俺にもそれ、手伝わせてよ」 そのためなら俺は、兄さんの想いを踏みにじることだって、できる。
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