第7章 それぞれの想い

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ルーシェスの大切なもの。それはアイルだ。 以前アイルが拐われたことがあって、その時のルーシェスの必死さに驚いた。そんなに執着してんのか、って。 だから兄さんのやったことは理にかなってると思う。だって本当にアイルはルーシェスを探しに城まで来たんだから。 アイルを捕まえれば、ルーシェスは表立って反抗はできなくなる。だから大人しく捕まった……はずだったんだけど、どうやらアイルの友達のお嬢様がルーシェスを救出してしまったらしい。 廊下に佇み、目を閉じる。 アイルは現在、直系の王族とその臣下のみが知る別荘に囚われている。アイルの友達だとかいうお嬢様や、その旦那につけていた監視から、「二人が見当たらない」という報告を受けた。たぶん、アイルを助けるために動いてる。 遠くから聞こえてくる足音に気付き、目を開ける。 「そんなに連れ立ってどこに行くんだ?」 現れた一行に、にこりと微笑みながら問いかける。アイル、ルーシェス、アイルの友達と、その旦那。全部で四人か。 「…ロディ兄さん…」 アイルが俺を見ながら、困ったように眉根を下げた。咄嗟にアイルを庇うように前に立ったルーシェスと相対する。 「ねぇアイル」 「…、ロディ兄さん、そこを、通してください」 「はは…なぁ、アイルは兄上の所有物になったんだろ?だめじゃないか、散歩は主人と一緒にしなきゃ」 「…っ」 アイルは可愛い弟。 でも、兄さんの特別になるんなら、話は別だ。 「…そこをどけ」 「お前は躾けても躾けても主人に噛みつくから困るなぁ」 「俺はお前らのペットでもなければ玩具でもない」 「………お前さ、ほんとに兄さんから逃げられると思ってんの? 馬鹿な奴」 嘲るように言うと、アイルがルーシェスの前に出てきた。 「あ、あの…っ」 「ん…?」 「レミジオ殿下は…俺のこと、…母の代わりにしたいだけ、なんです」 「…」 「でも…俺は…母には、なれない、から…似てるのって、顔だけだし…」 まぁ確かに。アイルはカティアにそっくりだけど、カティアになれるわけじゃない。兄さんもそれは分かってるはずだし、アイルを捕らえたのはルーシェスを逃がさないためだ。
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