第7章 それぞれの想い

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怪訝な顔をしながら体を起こす。 突然何の話だろう。昔? 昔ってどれくらい? 「カティアがいなくなった頃の話だ」 「…それが何」 またカティア。ムカつく。こんな時にでも兄さんは過去に囚われているんだ。 「カティアがいなくなって、俺は悲しくてたまらなかった。「悲しい」という感情を初めて知った。どうすればいいのか分からなくて、気持ちを持て余していた。だが、周りは俺の感情の機微など分からなかった。自分でも感情表現というのか…何かが欠落していたことは知っていたが、幼心にその事実にもショックを受けたな」 「…へー。何、カティアは分かってくれてたって話?」 「いや、カティアが分かってたかどうかは知らない」 「…?」 「ただ、そのとき俺が悲しんでいることを分かって、手を握って…」 兄さんが俺の右手を包み込むように握る。 ビクリ、と体が強ばった。 「ロディーノ…お前は、「俺たちは家族だ」と言った。だから、悲しいことは分かち合えるし、嬉しいことは一緒に喜べる、と」 体が動かない。 兄さんから、目が離せない。 「お前は俺に「家族」を教えてくれた特別な存在だ。その時から俺は、お前のことをかけがえのない大切な弟だと思っている。守りたいと、本気で」 「…兄、さん…」 「お前が俺を恋愛感情的な意味で見ていたことは知らなかった。気づいてやれなくてすまなかった。辛い思いをさせただろう。……だが、ロディーノ、」 兄さんの目は優しい。 言葉をひとつひとつ、丁寧に選んでいることも分かる。 「お前と同じ気持ちを返してやることはできない。俺にとってお前は大切な家族だ。そこに恋愛感情は芽生えない…」 「…」 「ここで俺のことを組み敷いても、心は動かされない。だが、それでもそうしたいと言うのなら…そうだな、好きにするといい」 「…」 俺は… 俺が、兄さんに、望むことは、
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