第7章 それぞれの想い

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兄さんを好きになったことを後悔したことはない。振り向いてくれないことに苛立ちを感じたことはあったけど、それでもこの想いを捨てようとは思わなかった。 ぼんやりと空を見る。 すると、ぽたりと頬に水滴が落ちた。 (…冷たい) 突然降り始めた雨は、容赦なく体を濡らしていく。無感情に雨に打たれながら、じ、と目の前を見つめた。 「…はは…」 そっと目の前の扉に触れたら、乾いた笑いがこぼれた。いつもなら家主の気持ちなどお構いなしに開けようとするけど、今はできそうにない。 「…絶対頼っちゃダメな相手だろ…」 ここに来たのは無意識だった。 俺はいつも、いつも…辛いことがあったら真っ先にここに来てた。だって俺が何をしても言っても受け止めてくれたから。 分かってる。それに甘えて、傷つけてた。 それでも。 「…、…ジェラ……」 頬を水が伝う。 拭うこともせず立ち竦んでいると、近くでパシャと水が跳ねる音がした。 「…ロディ?」 「!」 その声にギクリと体が強張る。 振り向けない。会わせる顔なんてないのに、俺はどうしてここに来てしまったんだろう。また傷つけるだけなのに、何で。 「こんなに濡れて…!どうした、何かあったのか?」 ジェラが慌てた様子で駆け寄ってきて、傘に入れてくれた。 「なん、でもない。たまたま通っただけ」 「そうか。でもこのままだと風邪を引いてしまうな…せっかくここにいるんだから、うちに寄って暖をとってくれ」 そっと手を握られる。逃げようと思えば逃げられたはずなのに、そのあたたかい手を振り払うことは…できなかった。
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