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兄さんを好きになったことを後悔したことはない。振り向いてくれないことに苛立ちを感じたことはあったけど、それでもこの想いを捨てようとは思わなかった。
ぼんやりと空を見る。
すると、ぽたりと頬に水滴が落ちた。
(…冷たい)
突然降り始めた雨は、容赦なく体を濡らしていく。無感情に雨に打たれながら、じ、と目の前を見つめた。
「…はは…」
そっと目の前の扉に触れたら、乾いた笑いがこぼれた。いつもなら家主の気持ちなどお構いなしに開けようとするけど、今はできそうにない。
「…絶対頼っちゃダメな相手だろ…」
ここに来たのは無意識だった。
俺はいつも、いつも…辛いことがあったら真っ先にここに来てた。だって俺が何をしても言っても受け止めてくれたから。
分かってる。それに甘えて、傷つけてた。
それでも。
「…、…ジェラ……」
頬を水が伝う。
拭うこともせず立ち竦んでいると、近くでパシャと水が跳ねる音がした。
「…ロディ?」
「!」
その声にギクリと体が強張る。
振り向けない。会わせる顔なんてないのに、俺はどうしてここに来てしまったんだろう。また傷つけるだけなのに、何で。
「こんなに濡れて…!どうした、何かあったのか?」
ジェラが慌てた様子で駆け寄ってきて、傘に入れてくれた。
「なん、でもない。たまたま通っただけ」
「そうか。でもこのままだと風邪を引いてしまうな…せっかくここにいるんだから、うちに寄って暖をとってくれ」
そっと手を握られる。逃げようと思えば逃げられたはずなのに、そのあたたかい手を振り払うことは…できなかった。
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