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「何かあったのか?」
マグカップを受け取りながら、ぼんやりとジェラを見つめる。
何か、といえば…そりゃ、兄さんとのことだけど。ジェラから告白を受けている身としては、どうしても伝えることができない。
「なんでも、」
「『何でもない』ってロディが言うときは、大抵強がってる時だよな」
「…」
「さらに言うと、ここまで憔悴してるって時は、兄貴関連だ」
ダメだ、ジェラには全て見抜かれてしまってる。取り繕おうとしても無理だ。
「…、ごめん…」
「謝らないでいい」
「でも」
「俺は、こうして頼ってくれて嬉しいよ」
「…でも」
「弱ったときに俺のことを思い出してくれたんだよな」
「……それは…」
「ありがとう。俺のところに来てくれて」
優しく抱きしめられる。この感覚はすごく久しぶりだ。あたたかくて安心する。
でも…
「ジェラ、俺みたいな奴に優しくしちゃ…ダメだろ」
「どうしてだ?」
「だってさ、…今さらかもしれないけど、お前の気持ち、踏みにじるようなこと、してる」
「?そんなことない」
「…っ、何でそんなに俺に甘いんだよ!」
「何でって…好きな相手を甘やかしたいって思うのは普通じゃないか?」
さらっと言われた言葉が胸を刺す。苦しい。
「だって、俺…今までお前の気持ち分かってなくて、…知らないフリ、してて…それなのに兄さんとのこと相談してさ、たくさん傷つけた、だろ」
「傷付かなかった、って言うと嘘になるけど…俺はそんなロディも含めて、好きになったから」
「…、」
「だから、こうして頼ってくれて本当に嬉しい」
柔らかく髪を撫でられる。
この心地好さに流されたらダメなのに、今まで散々甘やかされることに慣れてしまったからなのか、全部委ねてしまいたくなる。
「ロディのためなら、何だってするさ」
「…ジェラ」
「俺の『特別』だから」
「…特別…」
欲しくて欲しくてたまらなかったものを、ジェラは惜しげもなく与えてくれる。それがどんなにすごいことなのかを、今まで見て見ぬふりをしてたんだ。
「…好きだよ、ロディ」
その言葉への答えを出す勇気が、俺にはなかった。
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