158人が本棚に入れています
本棚に追加
結局、誰にも相談できないまま時間だけが過ぎていった。兄さんとも顔を合わせづらいし、ヴェルネルには話題を振るなと言われるし、そもそも城にこれといった居場所がない。
「それで、その…今夜も泊めてほしいなー…なんて…」
「ああ、構わない」
「いや、構えよ?!迷惑だろ!」
「迷惑だったら叩き出してるさ」
苦笑しながらジェラが迎え入れてくれる。
俺はまたジェラに甘えてる。頼んだら断らないと知って来てる癖に、断ってくれないとモヤモヤしたもので胸が埋め尽くされる。
自分のことながらワガママすぎて嫌気がさす。
「ジェラは俺に甘いと思いまーす…」
「今さらだな。それに、俺はロディが一緒に居てくれることが嬉しいよ」
「…そ、そっか」
まただ。
あのどしゃ降りの雨の日から、ジェラは俺に対する気持ちを包み隠さずストレートにぶつけてくるようになった。それがものすごく、むず痒い。
そのむず痒さが何なのか分からなくて、悶々と悩んでた。今の関係を崩してしまうんじゃないかと思って、一歩を踏み出せなかったけれど…
「…」
「ん?どうした?」
ぎゅう、と抱きついてみる。
当たり前だけど、嫌悪感はない。
頭や背中を撫でられるのも好きだ。
もう分かってるんだ。
楽しいときとか、寂しいときとか、悲しいときとか、一緒に居たいと思う。抱きしめられたら安心する。自分をさらけ出すことができる。嫌われたら生きていけないんじゃないかと、本気で思ったことがある。
それはきっと、相手がジェラだから。
「…なぁ、ジェラ」
「何だ?」
ジェラと視線を合わせ、じ、と見つめる。
相変わらずの優しい表情だ。この優しさにどれだけ甘えて、どれだけジェラを傷付けてきたんだろう。
深く息を吐き、口を開く。
「俺、ジェラのことが好きだよ」
ジェラはきょとん、とした顔になって俺を見つめ返した。そして微笑んで一言、
「ありがとう。俺も好きだよ」
そう言い返して、俺を柔らかく抱きしめた。
…。
……。
……??
(んん…?)
何だろう。何かが違う。何か間違ってる気がする。確かにお互い「好きだ」と伝えあった。抱きしめられた。いやでも違う。何が違うのかと言われると分からないけど、…あれ?
…これ、伝わってないんじゃないか?
最初のコメントを投稿しよう!