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俺は自分のことがそんなに好きじゃないんだけど、ひとつだけ自慢できることがある。
「兄さんはさぁ、色んな奴らに鉄面皮だとか冷徹だとか残虐な為政者だとか言われてるけど、実はすげー優しいんだ。相手を苦しめたらその分だけ、いやそれ以上に心を痛めて苦しむんだよ。顔には出ないけど。そこがまた可愛いというか、めちゃくちゃ甘やかしてやりたいって気持ちにもなるし、立ち上がれないくらい叩きのめして俺にすがらせてみたいって気持ちにもなるし、何て言えばいいんだろうなぁ、とにかくもう、すげー、好き。超好き。俺だけのものにしたい…なぁ、聞いてる?ジェラ?」
「聞いてる聞いてる。愛しの兄上殿が今日も可愛いんだな」
「そう!さすがジェラー、分かってる」
「はいはい」
上機嫌でにこにこと微笑みかけると、目の前に座る自慢の親友…ジェラルドも笑顔を返してくれた。
俺はジェラのことが好きだ。こんな俺と親友でいてくれてる、稀有な存在。俺の唯一の自慢。
「ほーら、もうダメだ」
「えー…あとちょっと」
「だめだ。飲みすぎは良くないぞ」
今、俺はジェラの家で酒を飲んでる最中だ。どうにもジェラの前だと安心しきってしまう。迷惑だろうに、ジェラは俺を拒絶することはないから、ついつい調子に乗って我儘を言ってしまいたくなる。
ジェラルドとの付き合いはわりと長い。そろそろ7、8年くらい経つんじゃないだろうか。
当時俺は城を抜け出しては、城下町に遊びに出かけていて、その日も同じようにお供もなしでうろついていた。うちの国は、治安がいいとはお世辞にも言えない状態なのに、我ながら馬鹿だったなぁと思う。
……で、そんな治安最悪の場所でどうなったかというと、柄の悪いチンピラたちに絡まれた。俺はそんな弱いつもりはなかったけれど、多勢に無勢。囲まれてあっという間に大ピンチ。そんな時に颯爽と現れたのがジェラルドだった。
あっという間に1人のチンピラの懐に入り昏倒させ、俺の手をとって逃げ出した。
『あんな危ないところに1人で行っちゃダメだ』
初対面なのに、その日助けてくれて、食事も用意してくれて、当時どこにも自分の存在価値が見出だせていなかった俺に居場所もくれた。何ていい奴。
それから俺は、暇さえあればジェラのところを訪ねるようになった。王子だってことは早々にバラしたんだけど、ジェラは一瞬ぽかんとしたあと、「そうなのか」と納得してくれたようだった。
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