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だが楽園にいるときと比べて、狂信者たちに囲まれ過ごす時間は無意味で退屈で、拷問に等しかった。
ただその時間は、苦痛をともに歓びを生み出す時でもあった。
その瞬間は、三年たった今でさえ、思い出すたびに息が止まるほど激しい感情に支配される。心も、体も。喜びとも悲しみともつかない感情は、いまだに相応しい名前が見つからない。けれど私は、それを恋だと確信した。
彼女は、空を眺めていた。
三年前の春。初めて教室に入った瞬間、私は彼女の存在に目を奪われた。窓際の、陽の差し込む席にいる、美しい少女。
肩にかかるほどの黒髪は淡く光を放っていた。瞳は澄みきった湖畔。天空の青を浮かべて凪ぐ。額にかかる幾筋かの髪が頬を撫でる風にそよぎ、なめらかな鼻筋を掠めた。
その雪解けの小川のように清らかな横顔から目が離せなかった。
彼女は私に気づいて振り向き、そして微笑んだ。真っ白な肌に夜空を埋め込んだような瞳は慈愛に満ちていて、睫毛の影が儚げに揺れる。私はふと、以前写真集で見つけた乙女の姿を心に浮かべた。磁器の花嫁像。彼女のすべてを覆い隠す薄いヴェールの質感。
私は彼女の笑みに、神々しく、穢れない、無垢な魂を見た。
そしてこの微笑みによって、彼女は彼女を包む春のヴェールを私にも着せかけたのだった。
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