2/4
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
むかしむかし、あるところに・・・・・・・ おじいさんとおばあさんがいました。 「おばあさんや、それじゃ芝刈りに行ってくるよ」 「はいよ、じゃあわたしは洗濯して夕飯作って待っとるよ」 おじいさんは領主の山の整備をして生計を立て、おばあさんはその生活を支え、共につつましく暮らしていた。 暮らしは決して裕福ではないが飢えることもなく、多くはないが集落の皆とも仲良く平穏に毎日を送っていた。 その日もいつも通りの穏やかな日常が送られるところだった。 おばあさんがいつもの川の洗濯場につくとその日は誰もおらず悠々と洗濯ができる状態だった。 「おやまあ、今日は永田さんも工藤さんも来ておらんのねえ」 いつもと違い広々と洗濯場を使える開放感と、それに矛盾するもの寂しさを感じながらおばあさんはいつも通り洗濯を進めていた。 「年かしらねえ、最近おじいさんの頻尿が気になるところだわ」 ついいつもの洗濯仲間に話しかけるように独り言をつぶやきながら洗濯をしていると 川上の方から何かが流れてくるのが見えた。 桜色の薄づいたそれは川の流れに併せて浮き沈みし、まるで「どんぶらこ、どんぶらこ」などと歌いながら泳いでいるようであった。 「おや、あれは桃かいな」 遠くからは確かに桃に見えた。 しかし、それが近づくに従い異様な大きさに驚きを隠せなくなった。 「おやまあ、なんと大きな」 まるで赤子が入っているような大きなそれは、なにかに導かれるようにおばあさんの元へ流されてきた。 おばあさんはそれを抱え上げ、なんとか岸へと持ち上げた。 「ふう、なんじゃろね、これは。桃、にしては大きすぎるようじゃけど」 ともかく岸へ持ち上げたそれをおばあさんはなんとか持ち上げ家へと持ち帰ることにした。 傷んでしまわぬよう慎重に慎重に、赤ん坊を取り扱うように、わが家へと持って帰った。 そしていつも通り、ゆうげの支度をしながらおじいさんをいつものように待ち、やがて日も暮れていった。 そして夜 「おじいさんや、聞いてくださいな」 「どうしたんだい、おばあさんや」 「今日、川で洗濯してましたらな、妙なもんが流れてきたんですのよ」 「妙なものかいな?」 「ええ、台所に置いてあるんですがね、桃のような形なんですけどね、とっても大きくてもうそれは赤子でも入ってるような」
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!