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それから年月は流れ、桃のように朗らかにと願いを込め、桃太郎と名付けられたその子も やがて元服となる年を迎えようとしていた。 老人だらけの集落に突然授かった子供。 それでも集落の老人たちは嫌な顔などひとつせず、我が子のように桃太郎を皆で育てた。 桃太郎もそれに応えるように大きくたくましく育った。 そんなある日のこと トントントントントントントントントン けたたましくドアを叩く音 「永田のおじいちゃーん」 「はいはい、今日も元気やの、桃太郎は」 「うん!今日の水汲みだよー」 「おお、ありがとうの、ほれ」 永田が巾着を渡すと桃太郎の目は輝きを増した。 「うわー!ありがとう、永田のおじいちゃんのコレすごい好き!!」 老人だらけの集落で健やかに育った桃太郎はいつの頃からか毎日の日課として水汲みや力仕事を進んで行っていた。 老人たちはそれに感謝し、桃太郎が喜ぶものを与え、それを生きがいのひとつとしていた。 「じゃあ、またねー!」 永田に水を渡すと桃太郎はまた次の家の仕事に向かう。 その次はまた別の家の力仕事、そうやって桃太郎は毎日集落の仕事。 毎日の仕事が桃太郎の喜びともなっていった。 「わー、今日はいっぱいだなあ、永田のおじいちゃんのきびだんご!!」 桃太郎を育てたおじいさん・おばあさんの家は決して裕福ではない。 もともとのふたりの生活に桃太郎を育てあげるとなると生活はカツカツである。 そこで日々の贅沢品などは皆が担おうと、誰が始めたということもないが自然とそれがこの集落のルールとなっていっていた。 そして今日もまた日が暮れて・・・ 「おばあさん、今日もいっぱい皆からもらってきたよ!」 「おお、本当に、ありがたいことやねえ」 「うん、永田のおじいちゃんの吉備団子、すごいいっぱいなの!」 「まあ、本当に、おじいさんが帰ったら夕げのあとで皆でいただこうかね」 「えへへ」 「そろそろ帰る頃合いね」 いつもの夕食の用意をして桃太郎とおばあさんはおじいさんを待つ。 やがていつもよりは少し遅いがおじいさんは戸を開き、いつもの食事、いつもの夜が訪れた。
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