第1章

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どうしようか そう思いながら、私はK大 薬学科の3階にある教室の一番前の席にすわっていた。 心は重い。 授業のベルがなり、生徒たちがそれぞれ好きな席にすわっている。 40人の生徒中、七割は女子だ。 そのせいか、声高いおしゃべりのひそひそ声が、教室の中を満たしている。 この耳ざわりな音が、より私の気分を下向にさせている。 教室の前の入り口から教授が入ってきて、この間出した実習レポートを返していた。 「皆さんのレポート、A.Bの評価以下の人は、もう一度提出してくださいね」 「えー 30枚も書いたのにやり直し~」 「書くのにこの一週間、睡眠不足なのに」 などの声が周りから聞こえる。 やり直しの生徒が多いのか、ブーイングがあちこちから聞こえてくる。 「でた 血の貴公子」 「笑いながら厳しい採点するって、みんなが血を見るって」 「5、6回の書き直しは当たり前ですって」 そんな声も聞こえてくる。 「考察や結果をネットから抜き出したのを、そのまま書かないでください。 自分たちの実験の結果を見て、どう考え 、どう関連するのかが、書かれてないです。 だらだら長く書いたらいいもんじゃないし、ひどいのは文章自体,日本語になってないのもあります。 書き直した人から、いつでも持ってきてください」 淡々と抑揚なく教授は言った。 学生たちは「このレポート、いつ終わるのだろうか」という思いを、顔にあらわしていた。 教室の雰囲気がどんよりと重い。 「 樋口さん 」 急に名前を呼ばれた。 「あなただけがAでした。H教授も化学薬品のレポートもよく書けていると、褒めていましたよ。 がんばりましたね」と 褒めてくれた。
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