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だけど……
俺たちの世界は「世間」とやらからすると『異質』なものらしい。
今日も雑音が喧しい。
「ねぇ、あれってさ……」
「男同士で手なんか握ってるよ」
「なんかキモくない?」
俺には、こいつらがどんな顔を向けているのかは「見ること」が出来ない。
そして、馨は何を言われているのか「聴くこと」が出来ない。
それは俺たちには決してマイナスなことだけではない。
そして、こいつらはそれを完璧に理解することは出来ないだろう。
俺たちがどんな思いでいるかなんて。
考えてもいないから、好き勝手なことを言えるんだ。
怒りが溜まっていく俺の裾を馨は軽く引っ張った。
「僕は大丈夫だから落ち着いて」と言っていた。
でも、言葉を紡ぐ指先は微かに震えていた。
俺は叫んで吐き出したかった言葉を飲み込んで、足早にその場から離れた。
「これが俺たちの『生き方』なんだ!」
「俺たちは見せ物じゃねぇ!」
そんな澱みがまた胸の奥に溜まった……
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