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望月光奈は鳳羅須を追おうとしたが、逃げ惑う人並みに飲まれ、思わぬ方向に来ていた。
ここ、どこなんだろ?
何とか人波から外れ、一息つける場所に来た。
そこは細い路地で、左右には七、八階ぐらいのビルが並んでいる。
光奈はケータイを取り出そうとバックを開いた。そこには鳳羅須から預かった、布の包みも入っている。
光奈は鳳羅須から、大事な物ということと開けないで欲しいという希望だけ聞いていた。
それほど大きくないし、かなり軽い。中身が気にならないと言えば嘘になるが、他人のプライバシーを覗くような真似はしたくない。
光奈はケータイを取り出すと、GPSで自分の居場所を確認しようとした。
「あれ? 圏外だ」
もっと空が見えるところに移動しないとダメらしい。
光奈は路を抜けようとした、すると光奈の行く先に何者かが立ちはだかった。
「どこへ行く、摩瑜利?」
聞き覚えのある声が凛と響いた。
学校に現れた鬼霊だ、名前は確か娑羯羅。左眼を血の滲む包帯で覆っている。
光奈はとっさに逆の方向へ駆けだした。
が、突然眼の前に娑羯羅が立ちはだかった。まるで、テレポートでもしたみたいだ。
「あたくしから逃げられると思っているのか?」
光奈はジリジリと後ずさった、すると娑羯羅がにじり寄ってくる。
どうしよう……
自分が追いつめられたことを光奈はひしひしと感じた。
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