第五章 覚醒

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 絶対に刺さらない位置にあったにもかかわらず、鳳羅須の右肩から血が噴き出した。娑羯羅(しやがら) の小太刀は聖鳳と同じように、刃が触れずとも相手を攻撃できるのだ。違いは聖鳳刀が光の刃を放つのに対し、竜爪刀は何も見えない。 「見たか、我が竜爪の威力。貴様の聖鳳など恐るるに足りぬ!」 「真明くん!」  離れたところで見守っていた光奈が声を上げる。 「大丈夫だッ、お前は充分離れて……うッ」  腹部から背中にかけて激痛が走った。見えない刃が腹を貫いた。 「人の事を心配する前に、己の心配しろ」  鳳羅須は痛みを無視し、意識を聖鳳刀の内部に集中した。聖鳳の刃が輝きを増す。 「タァッ」  聖鳳は竜爪で受け止められた。二つの刃が交わると凄まじい閃光が辺りを包んだ。 「ハッ」  幾度となく聖鳳を振るうが、ことごとく娑羯羅(しやがら) は小太刀で受け止める。竜の大将とは一味違うが、かなりの手だれだ。  再び腹部に激痛が走り、鳳羅須はとっさに娑羯羅(しやがら) と間を取った。 「聖鳳刀の力、使いこなせてはおらぬな」  大きなお世話だ、聖鳳刀を手に入れ十日も経っていない。神器がそう簡単に使いこなせてたまるか。  鳳羅須は竜爪刀の間合いを慎重に計っていた。あの小太刀は直接触れることなく相手を突き刺すことができる。だが、単筒や弓矢ほどの射程距離は無いようだ。現に竜爪で攻撃を受けたのは、娑羯羅(しやがら) と接近したときだけだ。     
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