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六
「やめて!」
彩香は思わず大きな叫び声を上げた。狩衣を着た男が刀を振りかぶり、鳳羅須に斬りつけようとしていた。
しかし男は動きを止めず、刀は鳳羅須の右肩に振り下ろされる。彩香はあの得体の知れない感覚で、鳳羅須が動けないことを察知していた。
よけて! 斬られる……
が、鳳羅須の右腕が肩から離れることはなかった。
刃が触れる直前、鳳羅須はわずかに身体を反らし攻撃をかわすと、狩衣の男に当て身を喰らわせた。体勢を崩した男の手から刀を奪い取り、間合いを取った。
これは一瞬の出来事で、彩香の後ろにいる好沢浩之の眼はその動きをまったく捉えていない。
「うぬは……」
狩衣の男のそばにいた巫女が彩香の顔を凝視した。
「そうか、貴様が本物の摩瑜利か」
「わたしは……わたしは神鳥彩香ッ、摩瑜利なんて知らない!」
「なるほど、見事に記憶と能力を封じられておるな。これなら如意宝珠の力を持ってしても見つけられぬわけよ。しかし、偽物とは明らかに違うな」
巫女は鳳羅須の向こうにいる少女に視線を向けた。
光奈!
浩之から鳳羅須を追って行ったと聴いていたが、合流していたのか。こんな危ない場所にいて欲しくはなかった。
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