第五章 覚醒

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「飛んで火に入る夏の虫、我らと共に来てもらおう」 「いや!」 「ならば力づくで連れて行くッ」  巫女の腕が彩香に伸びた。が、彩香の前に黒い影が立ちはだかり、彼女を後ろに突き飛ばした。鳳羅須だ。 「離れろッ」  彩香はとっさに後ろに身を引いた。  鳳羅須は輝く刃で斬りかかるが、巫女はまるで舞うような不思議な動きでそれをかわした。  脇から、小刀を抜いた優鉢羅(うつはら) が襲いかかってきたが、鳳羅須は難無く避け、刀を一閃した。 「うッ」  何が起ころうとも、ほとんど変化の無い顔が苦痛に歪む。 「優鉢羅(うつはら) ッ!」  巫女の悲痛な叫びが響き、優鉢羅(うつはら) の右腕が宙に舞った。 「おのれ、真明ッ」  巫女は水晶球を取り出し、正面にかざした。そこから稲妻のような紅い閃光が走り、鳳羅須を直撃した。 「くッ」  鳳羅須は吹き飛ばされ、電柱に叩きつけられた。 「鳳羅須!」 「真明くんッ!」  光奈の悲鳴を聞きながら彩香は地に伏した鳳羅須を抱き起こした。息はあるが、口の端から血が滴っている。 「しっかりッ」  その声に、鳳羅須はうっすらと眼を開いた。 「う……何故、おれを助ける?」 「なぜ……?」  それは、以前、彩香が光奈にした質問だった。     
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