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「飛んで火に入る夏の虫、我らと共に来てもらおう」
「いや!」
「ならば力づくで連れて行くッ」
巫女の腕が彩香に伸びた。が、彩香の前に黒い影が立ちはだかり、彼女を後ろに突き飛ばした。鳳羅須だ。
「離れろッ」
彩香はとっさに後ろに身を引いた。
鳳羅須は輝く刃で斬りかかるが、巫女はまるで舞うような不思議な動きでそれをかわした。
脇から、小刀を抜いた優鉢羅 が襲いかかってきたが、鳳羅須は難無く避け、刀を一閃した。
「うッ」
何が起ころうとも、ほとんど変化の無い顔が苦痛に歪む。
「優鉢羅 ッ!」
巫女の悲痛な叫びが響き、優鉢羅 の右腕が宙に舞った。
「おのれ、真明ッ」
巫女は水晶球を取り出し、正面にかざした。そこから稲妻のような紅い閃光が走り、鳳羅須を直撃した。
「くッ」
鳳羅須は吹き飛ばされ、電柱に叩きつけられた。
「鳳羅須!」
「真明くんッ!」
光奈の悲鳴を聞きながら彩香は地に伏した鳳羅須を抱き起こした。息はあるが、口の端から血が滴っている。
「しっかりッ」
その声に、鳳羅須はうっすらと眼を開いた。
「う……何故、おれを助ける?」
「なぜ……?」
それは、以前、彩香が光奈にした質問だった。
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