第1章

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 だって、ありえないじゃないか。店員が出てこないファミレスもおかしいが、心を読んだかのような注文の受け取り方だなんて。きっと、俺が無意識に注文してたんだ。トイレ行くよー、と行ったときに。きっとそうだ。俺はそう考え直すことにした。  窓を見ると、人が歩道を歩いていた。はじめは四十代ぐらいのおっさん。自販機に飲み物かタバコでも買いに行くのか、足はサンダルだ。  次に、恰幅のよいおばさんが犬の散歩をしていた。 「.........」  考えないようにした。  きっと、寝ぼけてるのだ。読心術が使えるウェイター?  いやいや、そんなことできるなら、もっと悪巧みしろよ。ファミレスのウェイターに満足してんなよと思う。そうだ。ありえないことだ。俺は考えないようにした。 「……あぁ」  ここWi-Fiなかったっけ。くそっ。いいや、またスマホでもしてよ。  ……来ないなぁ。 「――っ」  ソーシャルゲームをプレイしてると、三十分ぐらいは余裕で経つ。いや、三十分って。 「………」  来ないなぁ。  もう、一時間になろうとしていた。注文してから一時間。 「ここは何なんだよ。おい、遅いよ。俺は長居するために来たんじゃないのにさ」  ドリンクバーのコーラを何度も飲み干し、ゲップを大量にし、まだかまだかと待ち構えるが、注文した品は一向に姿を見せず、流石に怒った俺はクレームしたろかと席を立つが。 「――あ?」  立った瞬間、司会のすみに温かい食べ物が放つ湯気が見えた。視線を下げると、温かそうなハンバーグが皿の上にデンッと乗っけられていた。 「え」  いつのまにか、ハンバーグがテーブルにおかれていた。 「……え、え、……は?」  さっきまで、スマホをやっていたとはいえ、誰かが持ってくれば気づくはずだ。いや、天井に穴を開けて降下しても、目に見えない早さで皿をおいたとしても、流石に分かると思うんだ。だが、今のは何だ。 「.........」  まるで、瞬間移動というか。ワープでもしたかのように、いきなりだった。いきなり、俺の前にハンバーグがおかれていた。 「あ、あ、いや、き、気のせいか。ちがう、夢かこれ」  頬をつねるが反応なし。  おかしい。  ここは、おかしい。  店員と会わないだけでもおかしいのに、いきなりハンバーグ?  注文を把握してたのだっておかしいし。 「………」
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