第1章

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 何事かと思うと、スマホからだ。地震警報のアプリが起動したようだ。俺はそれで地震がくるのかと危惧し、腰を低くして、テーブルにしがみつくが、一向に地震は来ない。 「.........」  Bbbbbbbbbbbbbbbbbb!  Bbbbbbbbbbbbbbbbbb!  アラームが鳴り響く。  地震は来ないのに、地震警報のアラームがうるさい。 「っ、こ、こんなときに。来ないならなるなよ。くそっ」  解除しようにもできない。くそっ。  うるさいがスマホを捨てるわけにもいかず、音量も何故か下がらず、仕方なく耳をふさぎながら、年のためキッチンをくまなく探索した。やっぱり一人もいなかった。  002  店内にもどる。  さっきより数が増えていた。 「おいおいおい」  深夜の街灯しかない薄暗い風景に、大勢の人がファミレスを取り囲んでいた。無表情で。そこら辺にいそうな、というか近所だからどっかで見かけたことあるような人ばかりだ。公園で息子とキャッチボールしてそうな若いお父さんや、孫をかわいがってそうなじーさん、ばーさん、OLに見える女性や、他にも犬の散歩をしているおばさんもいて、それがなぜか無表情でファミレスを見ていた。いや、俺を凝視していた。 「――っ」  俺が移動する度に視線は俺を追ってくる。  一応入り口を見るが、そこにも人がいる。入り口のドアにへばりつくように、違うな、直立してまるで電柱かなにかが映えたかのようにして、入り口をふさいでいた。 「――ぁ」  耐えきれず、俺はトイレに逃げた。  トイレは三つほどのしょんべんの便器に、洋式の個室が二つほど。俺は個室に入り、視線から逃れた。そして、恐怖によるからだの震えを押さえようと必死になる。 「.....」  そうだ。曲でも聞こう。音楽だ。  俺は明るい曲をイヤホンさして聞こうとした。オタク向けの、かわいい声優がにゃんにゃん言う、ホラー映画では絶対流れないような音楽。これさえあれば、どんな状況だって耐えられると、イヤホンさして聞いた。  にゃん、にゃん、にゃん。  ねこみみ、ねこみみ、にゃん、にゃんにゃん。  わたしにほれて、ねこみみ、好きになって。  永遠に。  にゃん、にゃん、にゃにゃんにゃん。  かわいい声が耳を支配する。さっきまでの異質な世界を忘れさせてくれる。まるで、いつもの日常が続いてるかのように。俺を騙して。  にゃん、にゃん、にゃにゃん。
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