第1章

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 ――ぞくっ、とした。  俺は、洋式の便器に座りながら、真っ正面のドアを見つめる。  そこにはなにもないはず。ドアしかないはず。なのに、まるで目玉でもついてるかのように、視線を感じた。 「――っ」  声が出なかった。  い、いるのか?  やつら、いつのまにかいるのか?  イヤホンを外す。  耳をすます。  やつらの物音は――しない。  しかし、心のもやもやは消えない。恐怖は去ろうとはしない。イヤホンからこぼれる明るい曲が、にゃんにゃんが、自分の弱点を知られるかのように感じ、慌てて曲を止める。その際にスマホを落としそうになる。 「――っ」  そうだ。  個室のドアにはすきまがある。下にかがんでのぞけば――のぞけば。  のぞく、勇気がでなかった。  視線を感じる。  意味がわからない。俺は、ただ深夜のファミレスに入っただけじゃないか。何をしたっていうんだ。ただハンバーグ食っただけだろ。それなのに、それなのになんで。  なんで、こんな目に合わなきゃいけないんだ。ああもう、地震警報のうるさいな! いい加減止まれよ!  Bbbbbbbbbbbbbbbbbb!。  Bbbbbbbbbbbbbbbbbbbbb!  今度は、個室の外からも聞こえてきた。  そう、俺以外の誰かのスマホが地震警報のアラームを鳴らしたかのように。  外から、聞こえた。 「.......」  Bbbbbbbbbbbbb。Bbbbbbbbbbbbbbbbbbbbb。Bbbbbbbbbbbbbbbb!  いくつものアラームが重なる。  これは夢だ。そうだ、きっと夢だ。俺は考えないように考えないようにしようと心に決めて。 「夢なわけないだろ?」  上に顔をやった。  そこから、声がしたのだ。  そして、俺は視線をもどし、発狂しそうになり、俺はドアを開けてないのに、ドアが開かれる。 (了)
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