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――ぞくっ、とした。
俺は、洋式の便器に座りながら、真っ正面のドアを見つめる。
そこにはなにもないはず。ドアしかないはず。なのに、まるで目玉でもついてるかのように、視線を感じた。
「――っ」
声が出なかった。
い、いるのか?
やつら、いつのまにかいるのか?
イヤホンを外す。
耳をすます。
やつらの物音は――しない。
しかし、心のもやもやは消えない。恐怖は去ろうとはしない。イヤホンからこぼれる明るい曲が、にゃんにゃんが、自分の弱点を知られるかのように感じ、慌てて曲を止める。その際にスマホを落としそうになる。
「――っ」
そうだ。
個室のドアにはすきまがある。下にかがんでのぞけば――のぞけば。
のぞく、勇気がでなかった。
視線を感じる。
意味がわからない。俺は、ただ深夜のファミレスに入っただけじゃないか。何をしたっていうんだ。ただハンバーグ食っただけだろ。それなのに、それなのになんで。
なんで、こんな目に合わなきゃいけないんだ。ああもう、地震警報のうるさいな! いい加減止まれよ!
Bbbbbbbbbbbbbbbbbb!。
Bbbbbbbbbbbbbbbbbbbbb!
今度は、個室の外からも聞こえてきた。
そう、俺以外の誰かのスマホが地震警報のアラームを鳴らしたかのように。
外から、聞こえた。
「.......」
Bbbbbbbbbbbbb。Bbbbbbbbbbbbbbbbbbbbb。Bbbbbbbbbbbbbbbb!
いくつものアラームが重なる。
これは夢だ。そうだ、きっと夢だ。俺は考えないように考えないようにしようと心に決めて。
「夢なわけないだろ?」
上に顔をやった。
そこから、声がしたのだ。
そして、俺は視線をもどし、発狂しそうになり、俺はドアを開けてないのに、ドアが開かれる。
(了)
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