ペチュニアの咲くころに

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   ぐわっと驚いたように声を上げるも、その言葉すら言い終わることができず、頸動脈から血を流し、倒れこむ。返り血がリリを汚した。    「いーち・・・・・・」その声に気づき、振り向く男も、また振り向く前に、血を流す。    「にー・・・・・・」鮮やかに、俊敏に、確実に。その無駄のない動きは、美しさすらあった。そして笑顔で返り血を浴びる小さな姿は、もはや、人の子には見えなかった。  「さーん・・・・・・」  三人目を倒したとき、リリは向けられた鋭利な殺気に気づいた。慌てて振り向くも、敵はすでに発砲していた。  「うわっ」  バンっという音と同時に腕から血が出る。寸ででかわせたため、弾が食い込むことはなく、かすり傷と言ったところだ。しかし、その音に反応した敵軍はぞろぞろと集まりだした。  「むー。けっこういるなあ」  すねたような言葉とは裏腹に、その表情は楽しそうだった。    しばらく一人で応戦するも、その数から、リリは少なからず疲弊していく。自分の血なのか、返り血なのか判断がつかなくなったころ、突然銃声がなった。リリは一瞬、自分が撃たれたのだと覚悟したが、倒れたのは敵兵だ。  「!?」  リリが弾の飛んできた方を振り返ると、そこには、銃を構えたままカルが立っていた。  カルが来て、一か月。同じ部屋で生活する以上、話をする機会はたくさんあったが、結局リリは一度も声を掛けていなかった。エルやリズを先頭に、何人かが声を掛けていたが、カルは無視も同然の態度で、ただひたすらシイナが来るのを待っていた。  その様子を、リリは視界の端で見ていた。そんなカルに強さを感じることはできず、一目見た時に感じた人殺しの目は、勘違いだったのではないか、と勝手に落胆していた。  しかし、今視線の先にいるカルは、赤く大きな、人殺しの目で銃を構えている。その堂々たる表情で、もう一発撃ちこんだ。またしても敵の眉間を直撃し、一撃で倒す。その距離は目算で25mほど。とてもただのハンドガンで眉間を二度も狙える距離ではない。  その実状にリリの気持ちは大きく高ぶった。  
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