Prologue

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 『オートマトンと言う言葉をご存知ですか?』  プラネット内の公会堂にて、ステージに立ち、堂々と力説するのは、若いスーツ姿の男だ。 『皆さまご存知の通り、自動人形、少し古い言い方をすれば、ロボットと言う意味です。早速ですが、これをモルモット兵にお置き換えてみましょう。機械的な兵器と、自らの脳で動く兵器。どちらが有益と言えるでしょうか。……そう、機械的なモルモット兵など、無機質な銃火器と同じ。プラネットが製造すべきは、自らの脳で判断を下し、効率よく戦う生物兵器なのです』  広い空間の正面にあるステージは、赤く分厚いカーテンで囲われており、ステージを照らす、強すぎるスポットライトに対比するように、傍聴席は暗い。その暗さは自然的なものではなく、傍聴者同士が顔を合わせないための配慮でもあった。  『私が組み上げたプロジェクトを紹介する前に、まずは自己紹介をさせていただきます。私の名は、ロニー・ノーマン。オルタネイト領の中でも名高い、Drレドモンドのもとで研究員補佐を務めております。英国にある一流大学を首席で卒業。もちろん外の学歴など、ここでは何の価値もないことは存じております』  スポットライトと同様に、ノーマンの熱と、傍聴席にはあからさまな温度差が見て取れる。それでも引き下がることなく、変わらぬ声量で、自己紹介を行う姿勢は、素晴らしい熱意、と取ることもできるが、ステージに吊るされた愚か者、もしくは一風変わった道化の類だ。    「こういうのってさ、将来振り返った時、恥ずかしくなるんだろうね。客観的に見ていたら面白いのだけれど、内容はとてもつまらない」  ノーマンが自己紹介を終える前に、少年の笑う声がした。暗い傍聴席でひっそりと囁かれたその声は、もちろんノーマンには届かない。  
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