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順平が俺の知らない所で知らない男と遊んでいるとか、知らない女と会っているとか、恋人の行動を逐一気にしていたらキリがない。一日の出来事を根掘り葉掘り聞くわけにはいかないし、時間的にそんな余裕もない。そもそもそんな煩わしい事は、するのもされるのもご免だ。
昨晩の順平も似たような事を言っていた。干渉しすぎないという暗黙のルールが、俺達には合ってると思う。
「束縛されないのは有り難いけど、あんまり執着されないのも物足りない感じがするけどな。関心を持たれていないみたいで」
影山のストレートな意見に思わず唸りそうになった。
関心……。そう言われるとなんだが自信が無くなってくる。
「朝生が順平くんの行動を気にしないのは順平くんを信用しているからだろ? でも順平くんはどうなんだろうな」
影山は柵に肘をかけ、喉を仰け反らせて空を仰いでいた。
俺の視線に気付き、こちらを見る。いつもの平和ボケした目では無かった。気のせいなんかでは無く、影山は何かを探っている。
「どういう意味ですか?」
影山は基本的に楽天家だ。人をからかう事はあっても、他人のプライベートに踏み込んだり、お節介をかけたり、そんな面倒臭いことはしない。二人でこんな話しをするのも初めてだった。
影山が何を考え、何の根拠があってこんな事を言い出すのか、嫌でも考えてしまう。
影山が視線を足元に落とした。チノパンのポケットに両手を入れ、珍しく思慮深い表情を見せる。
「順平が、俺を信用していないと言いたいんですか?」
我慢しきれず自分から言った。
顔を上げた影山から憐れむ様な目を向けられ、居た堪れない気持ちになる。
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